引き続き国家の罠

を読んでます。よくできた小説のごとき面白さ。まさに事実は小説より奇なり。

以下、気になった部分を引用。

ロシア、イスラエル、日本で、私はいろいろな政治家や高級官僚と付き合ってきた。その中で鈴木宗男氏にはひとつの特徴があった。恐らく政治家としては欠陥なのだと思う。しかし、その欠陥が私には魅力だった。
それは鈴木氏が他人に対する恨みつらみの話をほとんどしないことだ。はじめは私の前でそのような感情を隠しているのだと考えていた。しかし、二人の付き合いがいくら深くなってもその類の話がない。―――政界が「男のやきもち」の世界であることを私はロシアでも日本でも嫌というほど見てきたが、鈴木氏には嫉妬心が希薄だ。―――裏返して言えば、このことは他人がもつ嫉妬心に鈴木氏が鈍感であるということだ。この性格が他の政治家や官僚がもつ嫉妬心や恨みつらみの累積を鈴木氏が感知できなかった最大の理由だと私は考えている。

メディアでは色々言われてるけど、この佐藤氏の文章はムネオをよく表している言葉なんじゃないだろうか。結局、ムネオってのはある意味でただの「バカ」だったんだと思った。「バカ」ゆえの純粋さがあったから、恨みつらみのない、ある意味"無垢"なムネオ像もありえたんだろうし、一方で「バカ」だからこそ、自分の沽券に関わるような事態に直面すれば、愚直に敵を攻撃し、それが結果として周囲に「恫喝」と受け取られることになったんじゃないだろうか。

佐藤氏は結局ムネオと懇意にしていたから、一緒に葬り去られることになったのだろうけど、ムネオに魅力を感じた、という言葉は、なんだか気持ちが分かるような気がするのである。

佐藤優『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』新潮社,2005

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて
1991年ソ連消滅。エリツィン大統領の台頭から、その後の大混乱の時代を経て、プーチン氏への政権委譲へと続く90年代激動のロシアを縦横無尽に駆け回り、類い希な専門知識と豊富な人脈を駆使して、膨大な情報を日本政府にもたらした男、それが元主任分析官、佐藤優だ。
2000年までの平和条約の締結と北方領土の返還という外交政策の実現を目指して、ロシア外交の最前線で活躍していた彼は、なぜ「国策捜査」の対象となり、東京地検特捜部に逮捕されされなければならなかったのか? そもそも、検察による「国策捜査」とは何か?
さらに、鈴木宗男代議士による外務省支配の実態とは? 小泉政権誕生の「生みの母」とまで言われた田中眞紀子外相の実像とは? 宗男VS.眞紀子戦争の裏側で何が起こっていたのか──。
512日にも及んだ獄中で構想を練り、釈放後1年以上をかけて執筆された、まさに入魂の告白手記。

山田昌弘『希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』筑摩書房,2005

希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く
かつて「パラサイト・シングル」という言葉を生み出した著者が、様々なデータを基に描く現代社会論。

現在の日本は職業、家庭、教育のすべてが不安定になり2極化し、「勝ち組」「負け組」の格差が拡大している。「努力は報われない」と感じた人々からは希望が消滅し、日本は将来に希望が持てる人と絶望する人に分裂する「希望格差社会」に突入しつつある。

著者は日本社会で希望がなくなり始めたのは、実質GDP国内総生産)成長率がマイナス1%となった1998年からと見る。この年、自殺者数は急増し、離婚、児童虐待、青少年の凶悪犯罪の増加傾向にも拍車がかかった。希望の喪失は社会の不安定要因となりかねず、早めに総合的な対策を講じることが必要と主張している。

最近読んだ・読んでる本

国家の罠』は読んでる最中。今朝の毎日新聞朝刊に、御厨貴によるこれの書評があって、それを読んで購入してみました。ドキュメントタッチなのですごい面白いです。おすすめ。

香港旅行始末記 四

ホテルで風呂に入り、床に着いたのは午前3時半もすぎた頃。2時間ほどの睡眠をとり、午前5時30分起床。6時からホテルの朝食をとって、6時30分にはU社の用意した羽田行きのバスに乗って、福岡行きのJAL便に乗るため出発。バスの中で軽く睡眠をとった後、羽田空港に到着。なんで未だに羽田なんかにいるんだよ、という苛立ちを少し感じつつも、ようやく香港行きの歯車が回りだした感覚で、すこし元気が出てきました。

JAL便は何の問題もなく予定通り出発しました。11時には福岡に到着し、乗り継ぎの手続きをして今度は香港行きのJAL便に搭乗しました。人生初のビジネスクラス、シートがめちゃめちゃゆったりしていて、昨日の疲れを癒すには十分過ぎるほどでした。食事は見た目は豪華でしたが、それほどおいしいものではなかったかな、まあ飛んでる航空機の中で作れるものなんて、どだい限界があるというものだろう。ちなみに飲み物は、高級ワインやら大吟醸酒やらなんでもござれという感じでしたが、小市民な自分はなんだか気が引けてきて普通にアサヒスーパードライを飲んでいました・・・。

香港行きJAL便は予定通り、午後4時過ぎに香港国際空港に到着。ここに到達するまで、実に24時間近い時間が掛かっているのでありました―――U航空の手際の悪さは到底許せるものではありませんでしたが、香港の空港に到着し、その活気に呑みこまれて行く中で、もうそんなことはどうでもいいと思えてくるほどに楽しくなってきたのもの、また事実でした。団体待ち合わせロビーで、旅行代理店の担当者を見つけると、全員集まってないので待ってくれとの指示。しばらくかかりそうなので、さっそく新生銀行のキャッシュカードでATMからお金を引き出してみることにしました。

新生銀行のカードは、VISAが運営するATMネットワーク"Plus"のマークが入ったATMなら、世界中どこでも使えるというシロモノ。旅行代理店との待ち合わせ場所に行く途中で、"Plus"のATMを見つけたので、そこへ向かってみました。そのATMは渣打銀行 "Standard Chartered Bank"(スタンダード・チャータード銀行)の運営するATMでした。なんだか一度入れたら二度とカードが返ってこなさそう気がして、本当にこんなところで日本のカードが使えるんかいな、と思いながらも恐る恐るATMに挿入。まるで麺でもすするかのように、ずるずると緩やかにカードが吸い込まれていきました。

最初に英語で操作するか、中文で操作するかの画面が出て、そのあと三つほどの選択肢が出てきました。上から順に"Credit accounts"、"Saving accounts"、"Checking accounts"の文字が出て、いきなり当惑。そもそも新生のカードにクレジット機能は最初からついてないはずなのに、creditの文字が出てきて焦りました。なんとなく"Checking accounts"ぽい気がしたので、それを選択。そうすると、"Withdrawal"(引き出し)の文字が出てきたので、これでよかったのか、とホッとしました。そして金額を500HK$と打ち込んでENTER。無事500香港ドル札が出てきました。香港は発券銀行が複数あるのですが、この時出てきたのは当然のことながらスタンダードチャータードのものでした。(ちなみに帰国後、新生パワーダイレクトで取引明細を確認したところ、1HK$ = 13.8円ぐらいのレートで引き落とされていました。小額でも降ろせるしレートも悪くないと思います)。(五に続く)

香港旅行始末記 三

U航空の用意した代替便は、香港午後9時着という到底受け入れ難いものでしたが、深夜ということで判断力ももはや限界。ここは判断保留ということで、一旦は事務処理が終了。不本意ながらも成田空港を出て我々はホテルに向かうことにしました。既に出国手続きは済ませているので、入国手続きをして手荷物を受け取ってから、空港を出発する必要がありました。午後9時着という重〜い事実を抱えることになった我々の、到着ロビーに向かう足取りはこの上なく重いものになってしまったわけです。

到着ロビーへ向かう途中、途方に暮れながらトボトボと歩いている我々に、気さくに話し掛けてくれる方がいました。どうやら同じ旅行代理店のツアーで香港に向かうらしく、この降って沸いたトラブルのせいで妙な親近感もありました。我々はU航空のあまりの手際の悪さを一頻り罵り、ぶつけようのない怒りを少し収めることに成功しました。そんな感じで話し合っていると、彼がこんなことを言うではありませんか。

「さきほど4人ぐらいのグループが、福岡経由の代替便をキャンセルして別の便に変えたようですよ」

こ、これは、これは僥倖か?いますぐにでもカウンターに戻れば、福岡経由の便が取れるのでは?しかし正直、自分は精神的に激しく疲弊していました。取れるかどうかもわからない便のために、いまさらあのカウンターに戻るのはもうイヤだ。もう午後9時着でも構わない、それよりも早くこの忌まわしい空港を出てホテルで休みたい・・・。そう思ったのですが、連れの友人がカウンターに戻ろうというので、この情報に一縷の望みを託して、また搭乗ゲートまで戻ったのでした。

搭乗ゲートのカウンターまで戻ると、もう人影もさすがに疎ら。時刻は午前2時半を回ったところでした。先ほど我々の受付をしてくれた社員とは別のU航空社員に、「福岡経由の便に空きが出たと聞いたので、確認して欲しい。空いていたら関空経由をキャンセルして福岡経由の便に回して欲しい」と伝えました。もうまもなく午前3時にもなろうかという頃で、さすがにさらに仕事を頼むのは気が引けましたが、我々も必死なのでありました。社員に頼んで待つこと10分、コンピュータ端末を操作していた彼がこう言ってくれました―――「福岡経由取れちゃったので、今から手続きしますね。」

福岡キター!!たとえ16時着といえ、この5時間の差は決定的に違う!さっきの情報をもたらしてくれた方、ありがとう!!社員さんありがとう!!

さらに待つこと10分、社員さんがチケットを持ってきてくれて「福岡から香港の便はビジネスクラスでお取りしましたので・・・」と周りを憚るように言ってチケットを渡してくれました。人生初のビジネスクラス・・・後にも先にも乗る機会はなさそうだなぁ・・・ラッキーラッキー。時刻は午前3時ちょっと前。ここまで来るともはや我々の粘り勝ちだったような気がします。あの時カウンターに戻らずホテルに行ってたら、と思うと・・・・。

結局当初の予定より大幅に到着が遅れるのに変わりはないのですが、出来る限りのことをやった我々は、納得ずくで成田を出ることにしました。誰も人のいない到着ロビーで入国審査。パスポートには出国印の上に"VOID"(無効)のスタンプが押されました。そして手荷物を受け取り、空港出口まで来ると社員が待機していて、近くで待っていたタクシーに乗車、ホテルまで送ってもらいました。まもなくホテルに着いてようやく部屋へ。長い闘いが終わりを告げました。時刻にして、午前3時過ぎ。初日からこんなトラブルに巻き込まれるとは思いもよらなかった・・・(四に続く)