香港旅行始末記 三

U航空の用意した代替便は、香港午後9時着という到底受け入れ難いものでしたが、深夜ということで判断力ももはや限界。ここは判断保留ということで、一旦は事務処理が終了。不本意ながらも成田空港を出て我々はホテルに向かうことにしました。既に出国手続きは済ませているので、入国手続きをして手荷物を受け取ってから、空港を出発する必要がありました。午後9時着という重〜い事実を抱えることになった我々の、到着ロビーに向かう足取りはこの上なく重いものになってしまったわけです。

到着ロビーへ向かう途中、途方に暮れながらトボトボと歩いている我々に、気さくに話し掛けてくれる方がいました。どうやら同じ旅行代理店のツアーで香港に向かうらしく、この降って沸いたトラブルのせいで妙な親近感もありました。我々はU航空のあまりの手際の悪さを一頻り罵り、ぶつけようのない怒りを少し収めることに成功しました。そんな感じで話し合っていると、彼がこんなことを言うではありませんか。

「さきほど4人ぐらいのグループが、福岡経由の代替便をキャンセルして別の便に変えたようですよ」

こ、これは、これは僥倖か?いますぐにでもカウンターに戻れば、福岡経由の便が取れるのでは?しかし正直、自分は精神的に激しく疲弊していました。取れるかどうかもわからない便のために、いまさらあのカウンターに戻るのはもうイヤだ。もう午後9時着でも構わない、それよりも早くこの忌まわしい空港を出てホテルで休みたい・・・。そう思ったのですが、連れの友人がカウンターに戻ろうというので、この情報に一縷の望みを託して、また搭乗ゲートまで戻ったのでした。

搭乗ゲートのカウンターまで戻ると、もう人影もさすがに疎ら。時刻は午前2時半を回ったところでした。先ほど我々の受付をしてくれた社員とは別のU航空社員に、「福岡経由の便に空きが出たと聞いたので、確認して欲しい。空いていたら関空経由をキャンセルして福岡経由の便に回して欲しい」と伝えました。もうまもなく午前3時にもなろうかという頃で、さすがにさらに仕事を頼むのは気が引けましたが、我々も必死なのでありました。社員に頼んで待つこと10分、コンピュータ端末を操作していた彼がこう言ってくれました―――「福岡経由取れちゃったので、今から手続きしますね。」

福岡キター!!たとえ16時着といえ、この5時間の差は決定的に違う!さっきの情報をもたらしてくれた方、ありがとう!!社員さんありがとう!!

さらに待つこと10分、社員さんがチケットを持ってきてくれて「福岡から香港の便はビジネスクラスでお取りしましたので・・・」と周りを憚るように言ってチケットを渡してくれました。人生初のビジネスクラス・・・後にも先にも乗る機会はなさそうだなぁ・・・ラッキーラッキー。時刻は午前3時ちょっと前。ここまで来るともはや我々の粘り勝ちだったような気がします。あの時カウンターに戻らずホテルに行ってたら、と思うと・・・・。

結局当初の予定より大幅に到着が遅れるのに変わりはないのですが、出来る限りのことをやった我々は、納得ずくで成田を出ることにしました。誰も人のいない到着ロビーで入国審査。パスポートには出国印の上に"VOID"(無効)のスタンプが押されました。そして手荷物を受け取り、空港出口まで来ると社員が待機していて、近くで待っていたタクシーに乗車、ホテルまで送ってもらいました。まもなくホテルに着いてようやく部屋へ。長い闘いが終わりを告げました。時刻にして、午前3時過ぎ。初日からこんなトラブルに巻き込まれるとは思いもよらなかった・・・(四に続く)